100年前を思い出す
土曜出勤の朝、イライラしながら車に乗り込む。
カーラジオしかついていない会社の営業車ではピーター・バラカンの番組がかかっている。
ジャニス・ジョプリンのライブ音源に続いてストーンズの『山羊の頭のスープ』のリマスター版からの曲がかかり始める。
頭の中のイライラが隅に追いやられ、ストーンズのこのアルバムについての記憶が蘇る。
今も物置の段ボールの中に眠っているはずのそれは私が高校生の時に新品のCDで買ったものだ。だからヴァージン盤のリイシューCDだと思う。
なるべくすべての小遣いをレコードやCDに費やしてはいたがそれでもレンタルや中古でやりくりしながらなるべくたくさんの音楽を聴こうとしていたあの頃。『ステッキーフィンガーズ』や『メインストリートのならず者』みたいな名盤は中古盤も見つけやすく、私の住む田舎のレンタルショップの棚にも置いてあったが、それら名盤と比較して(当時は)一段落ちる評価だった『山羊の頭のスープ』は結局新品で買うしかなく、それでも輸入盤というなるべく安く済む方法で手に入れたのだった。
ラジオから『100 years ago』のオルタナティブテイクが聞こえてくる。
高校生の私には『メインストリート~』のレイドバックした雰囲気よりも『山羊の頭のスープ』の割とエフェクター多めの分厚い音色の方が好みだったことを思い出した。
その後大学生になって手に入れたマルチトラックレコーダー(ROLAND VS-840)にこのアルバムのギターをイメージした音色をプリセットして「goats head」と名前をつけてひたすらそればかり使っていた。
そんなCDもギターもマルチトラックレコーダーもましてやこんな記憶さえ忘れた存在として今日の今まで思い出すこともなく私の生活の隅に追いやられていた。
まるで100年前のことのように
"it seemed about a hundred years ago"
ラジオの中で'73年のミック・ジャガーが歌っている。
大人にならなければ良かったと思うことはないかい?
"Don't you think it's sometimes wise not to grow up ?"