~この世界を素晴らしく~

本を読み、映画を観て、音楽を聴き子供を育てる。「どこにでもいる誰でもない私」の日常の記憶。

『三体 Ⅲ 死神永生』 劉 慈欣

わりとエンターテインメントよりだと思っていた三体シリーズの完結編。

 

これまでと同じく上下巻合わせて約800ページのボリューム。

 

しかしコールドスリープを駆使して時間を飛び越えまくる主人公たちが経験する時代は一気に数世紀をまたぐ長大な時空の旅となる。

 

前巻で三体世界からの脅威はある程度おさまり、三体世界と地球人類との共存関係からスタートし、やがて三体世界が事実上崩壊した後はさらなる未知の文明からの攻撃に備えなければならない人類の歩みがメインストーリーとなる。

 

三体世界との情報交換により手に入れた新しい技術と、智子の妨害が無くなったことにより再開された基礎研究の発展により他文明からの黒暗森林攻撃に対処すべく邁進する人類。

 

やがて多くの人類が地球を離れた時代に突入する下巻からはこれまでのエンタメSFの様式から一気にハードSFの領域に突入したような印象をうける。

 

地球外生命との戦争というライトなSFを入り口としたストーリーがその風呂敷を広げまくってとてつもなく壮大な世界観と時間軸をまたぐハードなSFとして決着するこの完結編は古くから続くハードSFのファンにとっては読み応えのある展開で、対してエンターテインメントとしてのSFを求めるファンにとっては前巻の『黒暗森林』の方が楽しめるのではないか?との印象だった。