~この世界を素晴らしく~

本を読み、映画を観て、音楽を聴き子供を育てる。「どこにでもいる誰でもない私」の日常の記憶。

本、読書

『三体 Ⅲ 死神永生』 劉 慈欣

わりとエンターテインメントよりだと思っていた三体シリーズの完結編。 これまでと同じく上下巻合わせて約800ページのボリューム。 しかしコールドスリープを駆使して時間を飛び越えまくる主人公たちが経験する時代は一気に数世紀をまたぐ長大な時空の旅とな…

『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー 黒原 敏行訳

終末を迎えた(おそらく核戦争?)以降の世界を生きる父と息子が南を目指して歩き続ける日々の物語。 文明は破壊され、ほとんどの生物は死に絶え、僅かな人類が灰に包まれた世界に残されている。 乏しい資源を奪い合い、時に弱い人間すら食料とされうる極限…

『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー 中村 妙子訳

第二次大戦が始まる数年前のイギリス。田舎の弁護士の妻として3人の子育てを終え夫と二人の人生を送り始めている主人公ジョーン。 結婚後中東に住む末娘の体調不良を見舞うためバグダッドへ向かい、イギリスへ帰る途中、砂漠の中の駅に数日足止めを食らうこ…

『サンセット・パーク』 ポール・オースター 柴田 元幸訳 と『我等の生涯の最良の年』

サンセット・パーク 作者:オースター,ポール 発売日: 2020/02/27 メディア: 単行本 原書では2010年に発行されたポール・オースターの小説『サンセット・パーク』 2008~2009年のリーマンショックの不況下、ニューヨークの外れの空き家に不法占拠の形で住む3…

『心は孤独な狩人』 カーソン・マッカラーズ 村上春樹 訳

1930年代のアメリカ(南部)を舞台に心に孤独を抱える5人の登場人物の物語。 政治信条や人種差別、性嗜好や思春期などの問題で世間に馴染む事が出来ない人達の孤独な心情と彼らと関わることになる一人の唖の男。 心に抱える想いを唖の男に話し、伝え、彼とと…

『マイルス・デイヴィスの真実』 小川 隆夫 感想

マイルス・デイヴィスの真実 (講談社+α文庫) 作者:小川隆夫 発売日: 2016/10/28 メディア: Kindle版 私にとってのマイルス・デイヴィスの入り口は『ビッチズ・ブリュー』だった。 大学生の時にポストロック的な音楽を聴くようになり、それらに影響を与えた…

『口語訳 遠野物語』 柳田国男 佐藤誠輔訳 感想

口語訳 遠野物語 (河出文庫) 作者:柳田 国男 発売日: 2014/07/08 メディア: 文庫 この間読んだ『アメリカン・ブッダ』に収録されていた『鏡石異譚』に遠野物語がテーマとして取り上げられていて興味を持った。 theworldisafineplace.hatenablog.com 原典を少…

『 i 』 西加奈子 感想

i (ポプラ文庫) 作者:加奈子, 西 発売日: 2019/11/06 メディア: 文庫 『十歳までに読んだ本』に書かれていたエジプトのミイラにまつわるエピソードが印象的で、また去年に又吉直樹の著作を何冊か読んだ際にお勧めの作家として西加奈子の名前があり、気にはな…

『生きるということ』 エーリッヒ・フロム

生きるということ 新装版 作者:エーリッヒ・フロム 発売日: 2020/08/28 メディア: 単行本 1976年に出版された心理学、哲学者エーリッヒ・フロムの著作の新装版を読む。 原題は『to have or to be』となっていて現代社会における生き方を”to have=持つ様式”…

『アメリカン・ブッダ』 柴田勝家 感想 

アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA) 作者:柴田 勝家 発売日: 2020/08/20 メディア: Kindle版 柴田勝家というペンネームのインパクトと表紙絵が普段手にしないタイプの絵柄だった買おうか悩んだが先に読んだ巻末の解説がおもしろくて購入。 www.hayakawaboo…

『十歳までに読んだ本』 西加奈子他 感想

十歳までに読んだ本 作者:加奈子, 西,ミリ, 益田,弘至, 棚橋,杏,ミムラ 発売日: 2017/07/12 メディア: 単行本 最近週末に子供と図書館に行くことが多い。 5歳の次女が紙芝居好きで毎週違うおはなしを借りに行くのに付き合って近所の図書館に通っている。 一…

『誰が音楽をタダにした?巨大産業をぶっ潰した男たち』 スティーヴン・ウィット 感想

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房) 作者:スティーヴン ウィット 発売日: 2016/09/30 メディア: Kindle版 CD→ダウンロード→ストリーミングと音楽の聴き方の劇的な変化を経て、いつしか音楽はタダで楽しむものになりつつある現代…

わたしは何のためにことばを書くのだろう?『忘却についての一般論』 ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 感想

忘却についての一般論 (エクス・リブリス) 作者:ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 発売日: 2020/08/28 メディア: 単行本 何の予備知識もなく、単にタイトルが気に入って手に取った本はアンゴラ出身の作者による私には初めてのポルトガル語圏の文学だった…

『LIFE 3.0 人工知能時代に人間であるということ』 マックス・テグマーク

LIFE3.0――人工知能時代に人間であるということ 作者:マックス・テグマーク 発売日: 2019/12/27 メディア: Kindle版 MIT教授で安全なAI研究を推進する団体の設立に関わった著者による「人間を超える知能を持ったAIの誕生は人類に何をもたらすのか」と「どうし…

『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』 ジェイムズ・リーバンクス

羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季 (早川書房) 作者:ジェイムズ リーバンクス 発売日: 2017/01/31 メディア: Kindle版 イングランド北西部、有名な景勝地でもある湖水地方で代々続く牧畜業(羊飼い)を営む著者の綴った本。 湖水地方の四季に分けられ…

『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』 ブレイディ みかこ

ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち 作者:ブレイディみかこ 発売日: 2020/06/03 メディア: Kindle版 去年話題になった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で今のイギリスの子供たちを書いた著者による今のイギリスのお…

『三体 Ⅱ 黒暗森林』上・下 劉 慈欣

日本語への翻訳スケジュールの都合により前作(三部作の1冊目)から少し時間を置いて読むこととなった2作目の上下巻。 前作のラストの展開を忘れていたので思い出しながら読む。 内容としてはいわゆるハードSFになるのだろう。ただし今回もそれほど難しく込…

『ネガティブ・ケイパビリティ 答えのない事態に耐える力』 帚木 蓬生

私も含め誰しもが「未知の事態」に遭遇した時、それを説明・解説する「答え」を求めてしまう。 小さな頃から教育として「問題を解く」=「答えを出す」ことを繰り返し鍛えられてきたのでしょうがないのかもしれないが、世の中は「答えの出ない」ことのほうが…

『身分帳』 佐木 隆三

44年の人生のほとんどを刑務所で過ごし、昭和60年に出所する主人公 山川。 身分帳(=刑務所での経歴)を時折読み返しつつ娑婆での人生をリスタートしようとする。 私生児として生まれ、施設や里親を転々とした生い立ちで、ましてや殺人の罪で服役~出所した…