『心は孤独な狩人』 カーソン・マッカラーズ 村上春樹 訳
1930年代のアメリカ(南部)を舞台に心に孤独を抱える5人の登場人物の物語。
政治信条や人種差別、性嗜好や思春期などの問題で世間に馴染む事が出来ない人達の孤独な心情と彼らと関わることになる一人の唖の男。
心に抱える想いを唖の男に話し、伝え、彼とともに過ごす時間が唯一の癒しとなっていく彼ら。
相手の唇から多少は言葉を理解する事が出来る唖の男もまた、たった一人の友人と心が通じ合えないという孤独を抱えている。
全ての登場人物の抱える孤独は決して解消されることはなく、原因となる問題もまた悲惨な現実の中で解決されることはない。
ただ物語は各人物の心の闇にそっと近づき、丁寧にその孤独を描写する。
その描き方を読むうちに自分の心の孤独をなぞっているような感覚になり、救いのない物語なのに何故か自分の孤独も癒されたような気がしてしまう。
最後の場面の朝日を待つ描写については未来への希望なのかそれともこれまでと同じ日々が続くという現実の厳しさについてなのか今の自分には判断できなかった。
この登場人物たち程絶望的な状況ではないけれど私の心にも孤独は常に存在する。
その孤独は決して救われることはなく、ずっと心の中に住み続けると思うけれどその孤独があるからこの様な物語に心が動かされることがあるのだと思える本だった。