『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー 黒原 敏行訳
終末を迎えた(おそらく核戦争?)以降の世界を生きる父と息子が南を目指して歩き続ける日々の物語。
文明は破壊され、ほとんどの生物は死に絶え、僅かな人類が灰に包まれた世界に残されている。
乏しい資源を奪い合い、時に弱い人間すら食料とされうる極限の世界で父親はただひたすら息子を守ることだけを支えに歩き続ける。
終末後の世界しか知らない息子は狂気に飲み込まれた人々を恐れながらも自分達親子は善いものであり続けたいと願い、困った人達にも手を差し伸べたいと思う。
過酷な環境で次第に病に侵され、徐々に死を意識する父親だが狂った世界でも良心を持ち続ける我が子の存在を唯一の希望として先に世界に絶望してこの世を去った妻の後は追わず、最期の時まで生き続けようとする。
章立ても無く、ただひたすらに親子の道すじを追い、時に過去の回想を挟みながら続く語り口が暗く辛い為、序盤は読むのがしんどくなりかけていた。
しかしこの物語の構造が厳しい社会を生きる人の中にある希望と絶望の対比と同じではないかと思えてくるとその行方がどうなるのか気になり、最後まで読み切ってしまった。
子供の未来という希望を糧に私は過酷な現実を生き抜くことが出来るだろうか?